平成の家族と食
序章:食の現状
・1982年以来、子どもの孤食が社会問題として認識されるようになった。
・和食とは(ユネスコ)
1. 多様で新鮮な食材と素材の味わい
2. バランスが良く健康的
3. 自然の美しさの表現
4. 年中行事との関わり
・「一汁三菜」は戦後の概念。60~80年代半ばに確立しピークを迎え、以後衰退
・食料消費の性質に、社会階層が強く働きかける可能性
・家族と食は常に結び付けられてきたが、社会状況の変遷はこれらにいかなる影響を及ぼしているのか
AMC(Ajinomoto Monitoring Consumer)調査
・㈱味の素が1978年より数年おきに実施
・沖縄を除く全国の、20~69歳既婚女性が対象
・層化二段無作為抽出によるサンプリング、自記式のアンケート(訪問留置法)
和食はどれくらい食べられているか
・73%が「どちからとえば」以上に和食志向
・年齢では50代以上で高く8-9割。40代以下では、学歴・世帯年収との正の相関
・20-30代単身女性では和食志向が弱い
一汁三菜はどのくらい作られているか
・多くの人が、品数が少なくとも栄養がとれていればよいと考えている(77%)
・一汁三菜のうち、一汁はよく実践されているが、三菜の実践は少ない。
(一汁三菜は、千利休が考案した理想的なもてなし料理の概念であり、実際の家庭料理として遍く根付いていたとは言い難い。大正時代には一汁一菜~二菜が模範献立として紹介されていた)
ファーストフード化は進んでいるか
・進んでいる。店舗や商品の増加・多様化
・中食で特に重視。栄養面・経済面からの合理化
・また、冷凍・レトルト・インスタント食品の利用頻度と味の評価が00年代後半より高まっている
行事食
・おせち、雑煮、クリスマスケーキ、年越しそばがよく食べられている(80%以上)
・おせちは60代以上で90%超。一方20代では70%を下回る
・20-40代のおせちの消費は、学歴・世帯人数・同居家族人数・子どもの数と強い相関。
・年越しそばは世代を超えて広く定着している
内容には、「家族の勝手でしょ」(2010,岩村暢子,新潮社)等と異なる部分もあった。岩村の論が実際の食卓に狭く深く迫ったものとするなら、本書は広く浅くという事になる。食DRIVEは東京のみから抽出したものであり、現代の日本の食卓を論じるにあたっては、本書で用いられたAMCのサンプルが優るだろう。ただし、アンケートの結果を盲信する危険性は岩村が述べている通りである。いずれの結果も、まったく正確に日本の食卓の現状を表しているわけではないのだろう。
共通しているのは、食卓が担う役割への期待だと思う。理想的な家庭と食卓のイメージが密接に結びついていて、その実現に政府も家族自身も期待している。しかし長時間労働が蔓延し、同じ時間に家族揃って食卓に座ることができない現実があり、食卓を担う主婦たちがそのプレッシャーに晒されているように思える。
金と時間という資源のいずれも不足しがちな現状で、努力や意識付けのみによって、一汁三菜で成り立つ手間暇かけた家庭料理と、それを囲む団欒を求めることはできないのは確かなことだ。食卓のかたちは、誰が望んだわけでもない方向へ変わっていっている。